【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第10章 Honeyed Threat
黒尾は立ち上がり、仁美 の手をそっと引いた。
「……遅いから帰ろうか。」
仁美は黙って頷いた。
外はもう暗かった。
外に出ると、夕方の冷たい空気が頬を撫でる。
その瞬間、黒尾は反射的に 仁美 の肩を抱いた。
さっきの強引さとは真逆の、壊れ物扱いのような優しさで。
「寒い?」
「……大丈夫。」
ほんの短いやり取りなのに、仁美 の声が震えないように努めたことを黒尾はきっと気付いている。
黒尾の手は離れない。
指先が絡んだまま、歩幅まで合わせてゆっくり歩いてくる。
その優しさが逆に苦しくて、仁美 は少しだけ黒尾の方を見上げた。
黒尾は気付くと、柔らかく、怖いほど慈しむように微笑んだ。
「……さっきの、嫌だったよな。」
「……ん。」
「でも、離れるのが……無理なんだよ。」
黒尾は歩きながら、何度も何度も 仁美 の手を握り直した。
「今週の家庭学習日さぁ…、学校行かないでずっと一緒にいようよ。」