【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
通知の光ひとつで、呼吸が変わる自分が嫌になる。
(こんなの……ほんと、バカみたいだろ。)
距離を置くつもりだった。
切り離すためだった。
なのに。
離れれば離れるほど、心は彼女の方へ引きずられる。
夜、黒尾が部屋で荷物を片付けていると、スマホが震えた。
《電話してもいい?》
一度ため息を吐いて、通話ボタンを押す。
「……なに。」
疲れた声。
優しくする余裕なんてもうない。
『今、ひとり?』
「練習終わったばっか。……で?」
言い方は冷たい。
でも耳は彼女の息遣いを逃さない。
『しんどいの。今日も……殴られて、』
黒尾は目を閉じる。
喉がきゅっと締まって、漏らすように声を出した。
「……俺、何もできねぇよ。」
気づけば、毎回そう言っていた。
まるで呪文みたいに。
「俺にはどうもできねぇ。あんたが変わんなきゃ、終わんねぇだろ。」
ただ、疲れた真実。
しばらく沈黙が流れた。
やがて、スマホの向こうから声が漏れる。