【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
公園の入口には車のライトが消えた影、そしてベンチの端に座るまどか。
夏の夜の静けさに紛れ、黒尾が近づくと、彼女は顔を上げた。
「……来てくれた。」
その声に安堵を混ぜた笑みが浮かぶ。
まるで待ち続けた子どものように。
「今日の試合、すごく格好よかったよ。」
柔らかい声。
純粋に誉める響きなのに、胸の奥がざらつく。
「……見てたなら、なんで声かけなかったの?」
「だって、学生の輪の中に入れないよ。」
小さく笑って、自分の腕をそっと撫でる。
その仕草が自然すぎて、黒尾は最初ただそれを見ていた。
けれど次の瞬間。
彼女の袖口から覗く、新しい痣が目に入った。
「……また?」
声は思ったより低く出た。
怒りとも、苛立ちともつかない音。
まどかはびくりと肩を揺らし、すぐに袖を引っ張って隠す。
「だいじょうぶだから。ほんとに平気。わたしが、悪いの。」
「……………。」
「来てくれてありがとう。それだけで、救われるの。」