【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
(……来たんだ。)
研磨の胸にざらりとした重さが沈む。
まどかは、黒尾の視線の先——
仁美の笑顔を見て、静かに目を細めた。
その目は羨ましさとも、悔しさともつかない暗い光を宿していた。
試合が終わり汗を拭く黒尾。
仁美は嬉しそうに駆け寄る。
「クロ!すっごかった!」
「おう、悪くなかったろ?」
黒尾も笑いながら仁美に応える。
研磨がタオルを肩にかけながら寄ってくる。
「帰ろ。」
三人並んで、いつもの帰り道へ。
その数歩後ろ。
校門の影、木陰に立つまどか。
離れた場所から、三人を見つめる。
その手に食い込むスマホ。
目は笑わない。
奪えないものを、見てしまった女の目。
三人の影は寄り添いながら伸びていく。
その少し離れた場所に、影ひとつ、じっと沈んでいた。
《会いたい、少しだけでいい》
その日初めて会いたいと言われた。
仁美と研磨と別れ、黒尾はジャージのまま歩き続ける。