【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第7章 Obsession
仁美は、その胸の中でゆっくり顔を上げる。
「クロの言葉で聞きたい……。どんなふうに好きだったのか聞かないと…ずっと、想像して苦しむだけだよ。」
小さく、でもまっすぐな声。
黒尾の目が揺れる。
簡単に折れない男が、追い詰められたときの目。
胸が上下し、呼吸を整える。
喉が震え、言葉を探してる。
「仁美に嫌われるのが怖い…。」
嫌いにならない…。
そんなことは言えない。
黒尾は仁美の体を抱きしめた。
誤魔化す訳ではない。
彼は震える手で、仁美を腕の中に押し込める。
「……話しているあいだ、仁美も抱きしめて…。」
仁美は震える黒尾の声に、返事をするかわりに大きな彼の背中を抱きしめる。
ポツンとポツンと…。
歯切れが悪く。
それでも黒尾は話だした。
誤魔化すことをしないで、真剣に。
言葉が途切れると彼の手は強く仁美を抱きしめた。
隠したい気持ちはそれでも、黒尾の言葉で仁美の耳に届いた。