【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第7章 Obsession
黒尾は話している間も、ずっと仁美を抱きしめていた。
背中を、優しく、何度も撫でて。
落ち着かせるみたいに。
でもたぶん、離したら自分が崩れそうで――。
仁美の呼吸が少しゆっくりになる。
涙の跡を指でぬぐいながら、黒尾はほっと息をつく。
そんな黒尾の胸元に、仁美が顔を寄せたまま、震える声で言った。
「……クロ、話して、ほしい。あの人のこと。」
黒尾の指がぴたりと止まる。
背中を撫でる手も、抱き締めた腕も。
まるで、攻撃を受けたみたいに硬直した。
「……やだ。」
短く、低く。
子どもみたいに拒否する声。
「話したら、嫌われる。」
黒尾は苦笑するように言ったけど、笑ってなかった。
伏せた睫毛が震えてる。
「俺が他の人好きだったなんて……聞いて、気持ちいいわけないだろ。」
声は強くない。
むしろ弱くて、情けなくて。
いつもの余裕なんてどこにもない。
そのまま腕に力をこめて、また抱き寄せる。
「でもクロ…私いま辛いんだよ…。」