第9章 夏日
明け方まで降っていた雨が上がって、蒸し暑い朝を迎えた。今日も夏日だ。
「あっつい〜」
ベッドの上で鈴はゴロゴロと寝返りを打つ。紺色のシーツが敷かれたベッドは伏黒の部屋のもので、所有者の彼はとっくに起き上がって冷蔵庫を覗いていた。
「水が切れそうだから買ってくるけど、なんかいる?」
「大丈夫〜」
気だるそうなのは寝不足のせいもあるんだろうな、と伏黒は思いながら彼女の格好に目が行く。
鈴が部屋着にしているぶかぶかのTシャツは伏黒がサイズアウトしたものだ。それだけで下は下着以外履いてない。寝返りを打つ度にちらちらとピンクで花柄の下着が見え隠れする。
「おい、なんか下履けよ。見えてんだよ」
「んー、いいじゃん。誰も来ないし。暑いんだもん…」
「襲われるぞ」
「伏黒くんのえっち。昨夜も2回したのに……」
寝不足はそれが原因だろう。墓穴を掘ったようで居心地が悪くなって、すぐに戻ると言い残して伏黒は部屋を出た。
(昨夜も激しかったくせに。ねむ…)
鈴が二度寝していたら再びガチャっとドアが開く。その音でようやく目が覚めて、ふわぁとあくびしながらドアに向かう。
自分がどんな格好しているかは気にしてなかった。だってドアを開けたのは伏黒だと思っていたから。
「ごめん、ノックし忘れた。伏黒いる?」
ドア越しに姿を見せたのは隣の部屋に住む同級生だった。
「あ、虎杖くん、おはよう」
「おはよう。あのさ…」
鈴が伏黒の部屋にいるのは日常茶飯事だから、虎杖と鉢合わせる状況は珍しくない。
なのにいつものように笑顔で挨拶したら、すぐにギョッとして赤面された。鈴はきょとんとして首を傾げながら言葉を繋げる。
「伏黒くんに用事だった?自販機に行っただけだからすぐ帰ってくるよ」
「いや…、その、蓮見はいつもそんな格好なの…?」
「え?」
視線は足元。なんだろうと思いながら下を向く。Tシャツの裾がめくり上がり、ばっちり下着が見えていた。