第1章 疑惑の寝言 ※
その日はひどく疲れていたんだ。
長丁場になった単独任務で2週間も高専に帰れなかった。
やっとケリがついて、夜行バスに飛び乗って東京に着いたのは深夜3時。
せめて一目、あいつの顔だけでも見たかった。それでこの疲れも吹き飛ぶ気がする。
何時に帰れるかわからないと連絡していたから、彼女はもう寝ているだろう。
高専について真っ先に向かったのは、鈴の部屋。お互い合鍵を持つ仲。音を立てないように静かに鍵穴を回す。
真っ暗な部屋。ベッドの上で恋人の鈴は眠っていた。
すやすやと気持ちよさそうに。
(会いたかった……)
起こさないよう、そっと頬に触れる。彼女は少しみじろぎして、幸せそうに笑った。
「…あ、五条先生、ダメ……。そんな乱暴にしちゃ…」
は………??
一体どんな夢見てるんだ。色気づいた彼女の声。
まさか浮気?
それとも彼女の願望?
考えれば考えるほど、疑心暗鬼になって、冷静さが消えていく。
嫉妬が脳内を支配して、気がつけば彼女に深く口づけていた。
すごく幸せな夢を見てたの。
腕の中に恵にそっくりな赤ちゃんがいて、五条先生や野薔薇ちゃん、虎杖くんが遊びに来てくれたんだけど。
五条先生てば、一番はしゃいじゃって
「恵にそっくり!ウケる〜!!」って言いながら手荒く高い高いするもんだから、乱暴にしちゃダメって注意したんだけどーー。