第4章 教師の憂鬱
ドアの前には伏黒に抱えられた鈴と虎杖、野薔薇が勢揃いしていて、四人も五条も互いに驚く。
「教師が授業サボって何やってんですか?
家入さん、鈴が階段で転んだんで診てもらえますか?」
「大したことないんですよ。足挫いただけで」
「ダメだ」
そこ座らせて、という家入の指示で伏黒は診察用の椅子の上に鈴を下ろした。
「過保護よねー、伏黒は」
「最初に医務室行こうって言い出したの釘崎じゃん」
なんやかんやで鈴はみんなに甘やかされている。
「はじめ!!」
タイムアウト係の鈴が見守る中、体術の授業は始まった。
今日の五条は本気モードで、虎杖が妬くぐらい特に伏黒をゴリッゴリにしごいていた。
(…手加減なしかよ…!)
経験は積んだはずなのに防戦一方。殺意すら感じる。虎杖と野薔薇がカバーに入ってくれなければとっくにノックアウトだ。
ピピーッと笛の音が聞こえた。授業終了の合図だ。
「今日はここまでだねー。せっかくノってきたのに残念」
「五条先生、今日わりとマジじゃなかった?」
「僕はいつも真面目なグレートティチャーだよ。そうそう、恵。鈴を大事にしないとマジで僕怒るから」
「……は?」
じゃっ!と手をひらひら振りながら、五条は立ち去って行った。
࿐༅
(相変わらずよくわからねぇ……)
五条の言葉なんて気にするだけ無駄だ。無意味に振り回されるだけ。
ジャージから制服に着替えながら、伏黒は気持ちを切り替えた。この後はみんなでりっぱ寿司に行く予定だ。
そういえば、とポケットの中を探る。例のアレは早く寮の部屋に仕舞いたい。
(……ひとつしかない?)
確かにふたつもらったのに。一応かばんの中や周囲を見回すがどこにもない。
さすがに教室の中に落としたとかはまずい。隅から隅まで探し回るがどこにもない。
「伏黒、どしたの?探し物?」
「いや…」
まさか虎杖は取らないよなと思いつつ、仕方がないので教室を後にした。
後日、伏黒は医務室で家入にぶん殴られる五条を目撃する。
アレの使い心地よかったから、もっとちょーだいとねだったとは彼は知らない話。