第4章 教師の憂鬱
呪術高専といえども都立の学校。達成できるかは別としてきちんとカリキュラムはある。
体育は任務や体術の授業でまかなえるが、国語や数学、保健などはそうもいかない。ただコマと人数が少ないので今年の保健の授業は他学年の男子合同授業になった。
講師は医師でもある家入で、淡々と教科書に沿って授業は進む。体の仕組みから家族計画まで。隣の席の虎杖は「ふーん」とか「ほー」とか妙に関心したような声を出していたが、別に目新しい発見があるとは伏黒には思えなかった。
「じゃあ、最後に業者からもらったサンプル配るから持って帰れ」
家入が配ったのはいわゆる避妊具だった。あるに越したことはない。持ってるけど。
「あ」
家入は最後の席のパンダの前に立ち止まる。パンダを上から下までじっくり眺めてーー。
「パンダはいらなかったな。代わりに伏黒にやる」
ぽいっとパンダの分も机の上に置かれて、みんなよりひとつ多い。
「いや、何で俺?」
「だって君は相手がいるから。まさか避妊しないでやってるの?殺すよ?」
家入のマジな視線が怖くて、伏黒は「ちゃんとつけてますよ…」と心の中で呟いて、それを制服のポケットに突っ込んだ。