第5章 ダークホース
「お待たせしましたー、日本酒です。」
私が注文したお酒が卓に届く。
隣で楽しく会話してる二人を横目に、一気に液体を飲み干した。
……嫉妬なんかしてない。きっと気のせい。
そもそも、毎週私以外の人と飲みにだって行ってる訳だし、彼が人気者だったのは今に始まったことじゃない。
私が知らないだけで狙ってる女性はたくさんいたはず。
まさか…私が簡単に、体なんか許したからちょろい女だと思われてた!?
自分は芹沢先輩のこと遊び人かもしれないとか、私は遊ばれてるーとか散々言っておきながら、自分もそうやって引っ掛けてた可能性があるってことね。
そう考えたらちょっと…イライラしてきた。
このままこの場に留まれば、怒りをぶつけそうな気がした私は二人の会話に無理やり突っ込んだ。
「あの、申し訳ないけど、私先に帰るね。」
二人の会話がぴたりと止む。
「え、ちょ、ちょっと待って古村。どうしたん急に。」
南波くんが驚きの表情を向けてきた。
「私、急用思い出したの。…二人で仲良くどーぞ。また、来週。」
財布を取り出し、多めに札を置いていく。
ちょっと待ってや!っと慌てる声が聞こえるが、私は振り向きもせずにそそくさと店から出て行った。