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❁✿✾ 依 依 恋 恋 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 依依恋恋 一話




作家───明智光秀と言えば、今やこの日本で知らない人などいないであろう人気作家だ。執筆分野は主に戦国ミステリー。陰謀渦巻く乱世を舞台としたものが多く、まるで実際に乱世で生きていたのでは!?と思わしめる程に緻密な謀の数々や戦、外交戦術などが描かれており、戦国時代好きな者達を虜にして止まないのである。

かく言う凪もその一人で、彼の作品には歴史オタクの友人を通し、中学二年の頃に初めて触れた。実は凪は昨今では実に珍しい薬草オタクで、彼の作品内には度々、様々な薬の内容が含まれていたのだ。時には人を救い、時に悪に利用される事もある古の薬草文化に心惹かれた凪は、いつしか明智光秀という一人の作家のファンになっていた。それこそ、大学卒業後の進路を左右する程に。

「凪、今日からお前には作家を担当してもらう」
「えっ!?兼続さん、本当ですか!?」

厳しい就活戦争を切り抜けた末、凪が勝ち取ったのは憧れの作家が専属契約を結ぶ、天下統一出版であった。別に元々読書家でも何でもない、ただの薬草オタクが一流出版社へ就職出来たのは奇跡としか言いようがない。天下統一出版は案件毎ではなく、作家一人に担当が一人つく体制だ。四月に入社式を終えたばかりの新人が、作家を担当させてもらえるなど異例中の異例である。

「こんな事で嘘をついてどうする。これがお前の担当作家の資料だ。午後の顔合わせ前にすべて目を通しておけ」
「す、すごい量……相当な数を執筆されてる作家さんなんですね」
「我が社の業績を支える一柱と言っても過言ではないからな」
「なるほど、失礼のないようにしないと」

兼続は凪と同じ大学の学部に通っていた、二つ上の先輩だ。入社二年目にして様々な業績を残す優秀な編集者であり、凪の新人教育係でもある。見やすくファイリングされている資料は、おそらく凪の為に兼続が用意してくれたものだろう。

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