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❁✿✾ 依 依 恋 恋 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 依依恋恋 二話



やれやれ、と内心嘆息を漏らすと、凪は別の意味で光秀の態度を受け取ったらしい。何やらぐっと気合いを入れた風に、真剣な顔を向けて来る。

「先生の実力ならこのくらい当然って事ですよ……!私も凄く期待してますっ」

当人にその気はまるでないとは言えど、惚れた女に期待を寄せられて気分を害する男はいない。手元の資料から視線を上げ、座卓越しに凪を見つめた。すっと金色の双眸を眇めた刹那、彼女がほんのりと緊張した風に身を固くする。

「元々色恋沙汰を書き起こすのは得手ではないが……お前にそう言われると、悪い気はしないな」
「!?そ、そうですか……」
「しばらく資料を読み込む。その間、ゆっくり甘味でも食べているといい」
「ありがとうございます……じゃあその、いただきますね」
「たんとお食べ」

口元へ薄く笑みを乗せ、偽りない本心を述べた光秀に対して凪の背筋がぴっ、と伸びた。借りてきた猫のように大人しい彼女が、このままではいつまで経っても甘味にありつけないだろうと気遣った光秀が、再び資料へ意識を向ける。本当に資料を読んでいるのだと思ったのか、彼女は光秀の邪魔をしないようにと目の前にあるタルトへそっと手をつけた。

さっくりとしたタルト生地と上品な甘さの生クリーム、そして舌触りの滑らかなレアチーズが瑞々しい桃とよく合うその一品は、どうやら凪の舌に合っていたらしい。美味しそうに時折きゅっと目を閉ざす仕草まで変わっていない事に胸の奥を淡く疼かせ、光秀はひと時の平穏を得る。やがて、凪が甘味を食べ終えたくらいの頃を見計らい、光秀が資料を座卓の上へ置いた。

「どうでしたか、先生。何かお話の主軸、思いつきました?」
「大筋は決まった。後は肉付けといったところだな」
「どんなお話かお伺いしてもいいですか?その、一応上に報告しなければいけないので……」

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