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❁✿✾ 依 依 恋 恋 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 依依恋恋 二話



凪が口をつけやすいよう、先に茶碗へ手を伸ばした光秀が茶で唇を軽く湿らせた。光秀にとっては何ら変哲のないいつも通りの仕草でも、見目の良さから些細な所作ひとつ取っても目を惹くものがある。それはどうやら凪にも有効だったようで、視線がぱちりと合わさった刹那、薄っすらと目元を染めた彼女が、慌てた風にいそいそと傍らに置いていたカバンから資料の束を取り出した。

「今回のコンセプトは日本神話をモチーフにしたものを事前にお願いしていたかと思います。そこに追加要素で、恋愛を取り入れて欲しいとの指示なのですが……」
「色恋話か……となると、客層は女が主となるな」
「はい、二十代から三十代をメインターゲット層として、コミカライズやアニメ化も順次視野に入れた動きを取りたいとの事でした」
「ほう?随分と欲をかいたものだ」

凪から渡された資料を軽くめくり、紙面へざっと目を通す。大筋は事前に貰っていたものと同じだが、一部細々とした修正や追加指定などがあった。光秀は割りと自由に執筆している方だが、すべての作家が自身の望む話を書けるかと言えば、そうでもない。

作品が商いと繋がっている以上、明確なターゲット層や設定、展開の指示、キャラクター像など、様々なテコ入れが入った上でひとつの作品が成り立つのだ。中でもコミカライズやアニメ化などを予め視野に入れて動くという事は、日頃書物を読まない者でも興味を惹くような要素を取り入れる必要性がある。それを小難しいと言われがちな日本神話モチーフでやると言うのだから、信長も中々な難題を吹っ掛けて来たものだ。

(大方、この娘が担当になれば俺を上手く駒として動かせると踏んでの事だろうが……まったく、意地の悪い御方だ)

昔から信長は人を動かす事に長けていた。それが現世でも存分に発揮されているという事なのだろう。凪が天下統一出版社に入社した事とて、面接を直に行っている代表取締役社長の信長が知らぬ訳はないだろうに。

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