第3章 出会いⅤ
[………曲がると…]
[間違いない…]
[……ここで合ってると思います!]
[…そうか]
(…着けて安心した)
目的地に着いたものの
彼の探していたところは単身者用のアパートだった
地図で見てみると鶴の湯の歩いていける距離でよかったけど
(こんな所に…)
言い方は悪いけど壁にヒビがはいってどんよりとした雰囲気の色 年季が入っているのがひしひしと伝わってくる
住むには少し清潔さもなさそうに見えてしまって
勝手ながら心配になってしまう
[……え…と]
[…ここであってます…?]
なんで確認しちゃうんだ
余計なことばかり言ってこの人をまた困らせてどうするの
毎回お節介なことばかりして知り合いでもないのに
[………ああ]
[間違いない]
(ですよね)
困らせてました
間違いないって言ってるけどそっぽ向いているし
私の顔そんなに見たくないのかな
(うーん…)
流石にこれ以上言うのも違うよね
案内もしたしあとは大丈夫なはず
初対面の人に対して弁えないと
まるで"あの時"のように
[〜♪]
(あ)
私の携帯の着信音だ
画面を見てみると椿ちゃんがこの近くまで来ているらしい
タイミングがいいと言うか何というか
[…………?どうし…]
[…あ…えっと……その]
[だと…私はこれで失礼しますね…!]
[……では!]
そう言うと同時にピューと走り出す
[は?………おいっ!]
何か言っているのは聞こえたけど距離が遠くて聞こえない
ただ戻るにしても椿ちゃんを待たせるわけにはいかないし私はお役御免だから大丈夫だろう
(………充分だよね)
と呑気に考えて
"また"桜さんと会うとも知らず駆け出していったのだ