第1章 壱 紅い月
私の言葉に一瞬驚いたようにした後、男は再び溢れんばかりの笑みを浮かべた。
「それなら俺もそうだよ。お揃いだね!」
「……っ」
この男はどこかネジが飛んでいる。言ってることもやってることもなんだか変だし、きっとこの言葉にも大した意味はない。
だが少なくとも私には、その言葉は"救済"だった。
この男は、同じ地獄へと堕ちてくれる人。
「俺は童磨。君は?」
「私は……澪」
「そっかそっか、澪ちゃん! よろしくね」
男、改め童磨は体を離すと楽しそうに笑った。そして改めてこちらに手を差し出してくる。
自然と私もその手を取ろうと、手を伸ばして__。
くらり。
立ち上がると同時に視界が揺らいだ。今になって気づいたが、私はどうやら全身の色々なところを打ちつけて痛めているらしい。
「……ど、うまさ……」
激しい痛みが全身を伝い、急速に意識が遠のいて行く。伸ばした手はうまく彼の手を掴みきれず、結局再び倒れ込みそうになった体を彼に支えられた。
「おーっとっと、まだ死んじゃだめだよー?」
最後に聞いたのはそんな声。それから今度こそ私の意識は暗転した。