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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第4章 闇を写す茶杯



「どっかに!絶対、近道があるはずだ……!」

7つ目の長い階段を上り切ったところで、ロンが息を切らしながら叫んだ。



見上げた先は、見知らぬ踊り場。
高い石壁に、ぽつんと大きな絵が掛けられているだけだった。
そこにはだだっ広い草原と、草を食む一頭の太った灰色の馬。


「こっちだと思うわ」
ハーマイオニーが右の通路をのぞき込む。


「そんなはずない!」ロンが反論した。
「あれは南だよ。窓から湖が見えるだろ!」



チユは2人の言い合いを横耳に、絵へ近づいた。
馬の周りの空気がかすかに揺らめく。


次の瞬間、がちゃがちゃと騒々しい音とともに、1人の小柄な騎士が画面に現れた。


「やあやあ!」


鎧をぎしぎし言わせながら、仔馬を追いかけ回している。
どうやら落馬したばかりらしく、膝には草がべったり。


チユがぽかんと口を開けた瞬間、その騎士はこちらを見つけて叫んだ。



「我が領地に踏み込む無礼者ども!もしや、このカドガン卿の落馬をあざ笑いに来たのか!?いざ、剣を抜けい!」



「ひゃっ!?」チユは反射的に一歩下がった。
「笑ってないです!ほんとに!」



カドガン卿は剣を振り回すが、あまりに長すぎて自分のバランスを崩し、草地にすっ転んだ。


「だ、大丈夫ですか?」
恐る恐る声をかけたのはハリーだったが、チユも心配になって身を乗り出した。


「下がれ、下賤のホラ吹きめ!」


しかし、卿は剣を杖代わりに立ち上がろうとして、見事に刃を地面に突き刺してしまう。
がんとして抜けず、ついに座り込んで兜を跳ね上げ、汗を拭った。



「……なんか、忙しい人だね」チユがぽそりとつぶやく。



「僕たち、北塔を探してるんです。道をご存じありませんか?」
ハリーが改めて尋ねると、カドガン卿の目が輝いた。



「探求であったか!」
先ほどの怒りは吹き飛び、胸を張って立ち上がる。
「我に続け!道は必ず見つかる!もし見つからねば、突撃あるのみ!」



「突撃はちょっと遠慮したいんですけど……」チユは弱々しく手を振った。



しかし卿は耳を貸さず、仔馬に乗ろうとしてまた失敗し、結局「徒歩あるのみ!」と宣言。
ガチャガチャと賑やかに走り出し、絵の端に消えた。

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