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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第1章 夏の知らせ




「チユ、君に寂しい思いなんてさせないよ。これからはホグワーツで、教師として――そして、父親として、君の成長を近くで見守れる。こんなに嬉しいことはないんだ。」



『父親』という言葉が、チユの胸に温かな光となって降り注いだ。
それは、まるで夕暮れの柔らかな陽射しのように、彼女の心の奥底をそっと照らした。

今まで感じたことのない、優しくて少しこそばゆい感覚。
チユの頬がほんのり赤くなり、目がじんわりと熱くなる。


ずっと求めていた何か――家族という絆、誰かに必要とされるという確信――が、ゆっくりと心の隙間を埋めていくようだった。



「リーマス……ありがとう。」



チユの声は小さく、震えていたが、そこには純粋な感謝と喜びが込められていた。
彼女はカップを握りしめ、唇をきゅっと結んで笑みを浮かべた。



嬉しさと戸惑い、そしてこれからの期待が、彼女の心を色とりどりに染め上げる。


リーマスは静かに微笑み、彼女の頭をそっと撫でた。
その手は、いつものように少しごつごつしていて、でもどこまでも温かかった。


夕暮れの台所は、2人を包むように静かに時を刻んでいた。


ハーブの香りと、窓の外の橙色の空が、チユの心に新たな希望の光を灯していた。
この喜びは、きっと生涯忘れることのないものになる――チユはそう確信していた。


やがて、リーマスがゆっくりと立ち上がった。
薄暗い台所に揺れるランプの光が、彼の背中に柔らかな影を落とす。



「準備することが山ほどあるんだ……教材、授業計画、それに君に読ませたい本のリスト……」



リーマスの声は穏やかだったが、どこか遠くを眺めるような響きを帯びていた。
言葉の端に、かすかな震えが混じる。



人狼としての自分――満月の夜に獣と化す呪われた存在が、ホグワーツの教師として生徒たちの前に立つ資格があるのか。

その葛藤が、彼の胸の奥で静かに、だが重く蠢いていた。



ランプの光が彼の瞳に映り込み、深い思索と不安を映し出す。



チユは目を大きく見開き、思わず身を乗り出した。
彼女はリーマスの声に潜む微かな揺れを聞き逃さず、胸に小さな波が立った。


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