第3章 吸魂鬼
ハーマイオニーはハリーのほうに向きなおった。
「ちょっと学校を離れて、ホグズミードを探検するのもすてきじゃない?」
「だろうね」ハリーは沈んだ声で言った。
「見てきたら、僕に教えてくれなきゃ」
「どういうこと?」ロンが聞いた。
「行けないんだ」
ハリーが力なく言うと、チユはぱちりと瞬きをした。
「ダーズリーおじさんが許可証にサインしなかったし、ファッジ大臣も……だめだった」
その言葉に、ロンの顔は愕然と歪んだ。
「許可してもらえない?そんなのおかしいよ!絶対、マクゴナガル先生か誰かが許可してくれるはずだ!」
チユは唇を噛んだ。
マクゴナガル先生の厳しい眼差しを思い浮かべる。
あの先生に「遊びに行きたいです」なんて言えるだろうか。
ハリーは苦笑いを浮かべる。
「いや……無理だよ。先生は絶対に許してくれない」
「じゃあさ!」ロンが勢い込んで言う。
「フレッドとジョージに頼めばいいんだ。あいつらなら秘密の抜け道を知ってるし――」
「ロン!」
ハーマイオニーが厳しい声で遮った。
彼女の眉間に皺が寄る。
「シリウス・ブラックがまだ捕まってないのよ?そんな危険なこと、ハリーにさせちゃだめ!」
ロンは一瞬たじろいだが、すぐに肩を張った。
「でも僕たちが一緒にいれば、ブラックだって手を出せないはずだ!」
――そんなに簡単なことじゃない。
彼女は黙ったままハリーを見た。
彼の瞳の奥には、自分でも抑えきれない不安が漂っているのに、それを悟られまいと必死に笑っているようだった。
「ロン……」
思わずチユは声を出していた。
「ハリーを守りたい気持ちはわかる。でも、危ないことを軽く考えちゃだめだよ。…ハリーが無茶して傷つくの、いやだもの」
ロンは言葉を詰まらせ、耳まで赤くしてそっぽを向いた。
ハーマイオニーはほっとしたようにうなずき、クルックシャンクスのかごの紐を解きはじめた。
「そいつを出したらだめだ!」
ロンが叫んだ瞬間、クルックシャンクスはふわりと飛び出し、あくびをしてからロンの膝に飛び乗った。
すぐにロンのポケットがもぞもぞと震え、ロンが慌てて払いのける。
「どけってば!」
「ロン、やめて!」
ハーマイオニーが怒鳴り、チユは慌てて仲裁に入ろうと身を乗り出した。