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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第1章 夏の知らせ



「ええ、欲しいのは――」ハリーが言いかけた瞬間、
「どいて!」と店長が叫び、彼を押しのけた。


店長は鉄の檻へと突進した。
檻の中では、『怪物的な怪物の本』が一層激しく暴れ、鋭い牙のようなページで互いを攻撃し合っている。


店長はステッキを振り回し、まるで猛獣使いのように檻に立ち向かった。



「これ、ください!」 チユは思わず声を上げ、店長の背中に呼びかけた。
だが、その声は少し震えていた。



「ねえ、私たち、これどうやって持ち帰るの? ロープで縛る?それとも、呪文で眠らせるとか?」


ハリーが苦笑いを浮かべ、眼鏡の奥で緑の瞳がキラリと光った。「ハグリッドなら、『優しく撫でてやれ』とか言いそうだけどね、試してみる?」



チユは目を丸くし、両手を振った。
「撫でるどころか、噛まれそう! 私、指はまだ10本必要だよ!」



店長がようやく檻から本をを引きずり出し、革のベルトで厳重に縛り上げてカウンターにドンと置いた。



「これでどうだ!他に必要な本は?」



店長が息を切らしながら叫ぶ。


「カッサンドラ・バブラツキーの『未来の霧を晴らす』をください」
ハリーが答えると、店長は肩を落とし、分厚い手袋を外した。


「……あぁ、『占い学』を始めるんだね?」



そう言って店長は、3人を店の奥へ案内した。
そこには占いに関する本だけが並ぶ小さなコーナーがあり、机には本がうず高く積まれている。



「『予知不能を予知する―ショックから身を護る』……『玉が割れる―ツキが落ちはじめたとき』……」
チユは背表紙を読み上げて、目を丸くした。


「な、なんかすごく縁起悪いタイトルばっかり……」


ロンが鼻を鳴らす。
「だろ? ほら見ろ、占いなんて眉唾なんだ」



「これですね」
店長がはしごを上り、黒い背表紙の厚い本を取り出した。


「『未来の霧を晴らす』。手相術、水晶玉、鳥の腸……基礎的な占い術のガイドブックです」



説明の声をよそに、ハリーは別の本に目を奪われていた。
机に並ぶ1冊――『死の前兆 最悪の事態が来ると知ったとき、あなたはどうするか』。


表紙には、目をぎらつかせた黒々とした犬が描かれている。
熊ほどもあるその姿に、ハリーは顔を引き攣らせていた。


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