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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【3】

第8章 ホグズミードの知らせ


翌日になっても、ロンの機嫌は直らなかった。
グリフィンドール塔の空気まで、どこかピリピリしているように感じられた。


『薬草学』の温室では、秋の風がガラス越しに光を揺らしていた。
チユ、ハリー、ロン、ハーマイオニーの4人は『花咲き豆』の作業台に並び、
ふっくらとしたピンクのさやをむしり取っていた。


しかし、ロンは終始不機嫌で、豆をつかむ手にも力が入りすぎていた。



「スキャバーズは、どう?」
おずおずとハーマイオニーが尋ねる。



「隠れてるよ。僕のベッドの奥で、震えながらね」



ロンは冷たく言い放ち、豆を放り投げるように桶へ入れようとした。
だが勢い余って、豆は床に散らばり――ぱっと、可憐な花を咲かせた。



「気をつけて、ウィーズリー!」
スプラウト先生が思わず声を上げた。



ロンがばつの悪そうな顔をしている横で、
チユはしゃがみ込み、小さな花をそっと拾い上げた。




「ねえロン、花もびっくりしてるよ」
冗談めかして言ったつもりだったが、ロンは苦笑もせずに背を向けた。




チユは胸の奥で小さくため息をついた。
ハーマイオニーもバツが悪そうに眉を下げている。



その後の『変身術』の授業。
マクゴナガル先生の厳しい声が響く中、ハリーは授業の終わりにホグズミードの件を先生に頼むつもりで、教室の後ろでそわそわしていた。


ところが、前の方からざわめきが起きた。
振り向くと、ラベンダー・ブラウンがパーバティに抱きしめられ、泣いていた。



「どうしたの?」
チユは思わず声をかけた。
ハーマイオニーも心配そうに近づく。



「ラベンダーのビンキーが……ウサギが、キツネに殺されたの」
パーバティが代わりに説明した。


「まあ……ラベンダー、かわいそうに」
ハーマイオニーが優しく言う。



ラベンダーは涙をぬぐいながら、声を震わせた。
「先生の言った通りだったのよ……“あなたの恐れていることは10月16日に起こります”って!」



チユは思わずハリーと視線を交わした。
(トレローニー先生の予言……まさか、こんな形で?)



ハーマイオニーが少し困ったように眉を寄せる。
「ラベンダー、あなた……ビンキーがキツネに殺されることを恐れていたの?」

「キツネってわけじゃないけど……ビンキーが死ぬことはずっと怖かったのよ!」

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