第4章 赤い顔【高杉晋助】
部屋に入ると、高杉さんは窓に腰かけお猪口を手にしていた。
本当にこの方は月が良く似合う。
「…なにそこで突っ立ってる。こっちに来い」
「っあ、はい……」
そう声をかけられ私は静かに部屋に入っていく。
部屋は高杉さんの香りとお酒の匂いでいっぱいで、それだけでクラクラ酔いそうだった。
「何か用か?」
「あ、いえ……飲み会、来ないんですか?」
「あァ...そういえばそんなのがあったなァ」
口元に笑みを浮かべながらも行こうとはしない高杉さん。
「月が綺麗でな……こういう日は一人で過ごすのが風流ってもんよ」
「そう、ですか……」
「」
低い声で私の名前を呼ばれると身体がゾクッとする。はい、と返事をすると、その場から立ち上がり、畳の上に座り込む。
「俺と一緒に飲まねぇか」
思わぬ誘いにびっくりし身体が固まってしまう。
「え、えと...」
「…いや、違うな。俺と飲め。命令だ」
そういうと高杉さんは私用のお猪口を目の前に差し出してきた。
命令、かぁ。それだと断れないよね。
なんとも高杉さんらしい言い方だな、と思い、私はお猪口を受け取る。