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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第7章 仮契 〜甘契〜


ハンガーに掛かっている服を手に取ると、まだしっかりと見ていないのにワクワクしていた。

「それ、絶対君に似合うで」

肩に顎を乗せて耳元で囁く副隊長に心臓を跳ねさせながら、そうですかね?と平静装って返す。

「おん。試着してみ?」

頷いて試着室に入ろうとすると、持っとくでと私の肩にかかるショルダーバッグのベルトを掴んだ。お礼を言いながら腕を抜き、試着室に入る。

似合うかな…?

私が手に取ったのはワンピース。副隊長が今日ワンピースを着せてきたから。似合うとも言ってくれた。
淡い色をした柔らかな生地で、無地という大人っぽさ。

副隊長、喜んでくれるかな…そんな期待を持ちながら弾んでいく心。

選んだワンピースを着て試着室の扉を開ける。恥ずかしさと期待を抱いていたのに、たくさんの服を持って目の前にいた副隊長に呆気に取られた。

なんでそんなにニコニコしてるんですか…。

「めっちゃ似合っとるやん!僕、好きやで!」

「っ…あ、ありがとうございます…これ、買います」

好き、なんて…軽々しく言わないで…。跳ねる心臓が勘違いしていく。副隊長が好きだと言ったのはワンピースのことなのに、私に言ってくれたような…そんな錯覚になる。
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