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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第7章 仮契 〜甘契〜


準備出来た?と自室で着替える私に声をかけてくる。あの…返事をしてから入ってきてくれないですかね…。

何を着ようかと、下着姿で少ない私服と睨めっこしていた。
慌ててしゃがみ込み、自身を隠すように抱きしめて縮こまる。

「なぁ……デートやめて、家で楽しまん?」

ホックに指がかかり、慌てて離れる。

「……楽しみにしてたのに…」

ボソッと本音を零せば、これ着てと柔らかな生地の清楚な白のワンピースを私の前に翳した。後ろから腕を伸ばされているので、腕の中に閉じ込められてるみたい。

そのまま耳元で囁き始める彼に、擽ったさから肩を竦ませた。

「僕、こういうん好きなんや…着てくれへん?」

副隊長は清楚系が好き…ちゃんと覚えました。けど…近過ぎます。なのに私の身体は勝手に引き寄せられて、背中を副隊長の胸に預けてしまう。この温度が心地いいのにドキドキする。

この気持ちがバレませんようにと願いながら、この人に触れていたくなる。

髪に頬を擦り寄せてくる彼に、私の温度は上がっていく。
私を勘違いさせないで…。

「なんや、距離近いと勘違いしてまうな…君が僕のこと好きみたいや」

気付かれてしまうのではないかと焦りながらも、想いが届かないもどかしさに胸が締め付けられる。
一度目を閉じて、愛しい人の体温を堪能してから、ワンピースを着ようと動き出す。

待って、とホックの部分に指を引っ掛けて引っ張られる。取れるかと思って咄嗟に後ろに下がると、副隊長の腕の中に閉じ込められた。

「僕が着せる」

副隊長は手に持っていたワンピースを頭から被せ、思ったよりもちゃんと着せてくれた。何かされるのではとドキドキしながら思っていたが、背中のファスナーを上げて、軽く肩を叩いた。

「似合っとるな。可愛ええで」

クルッと身体を反転させられ、全身を舐めるように見られた。言葉に胸を踊らされながらも、その視線に甘く危険な空気が漂う。

だがすぐにニコニコと柔らかく笑い、行こっと手を引く。先に髪をセットしてから家を出た。
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