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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第7章 仮契 〜甘契〜


美味しい〜と言いながらフレンチトーストを食べ進めていると、ええ顔しとるねと笑われた。

「僕のことも食ったら、そないな顔するんかな…」

「んっ!?ゴホッゴホッ……フレンチトースト、オイシイ〜…」

頬杖をつきながら私を見つめていた副隊長は、肩を竦めてくっくっくっと堪えるように笑い始め、可愛ええなとクスクスし出した。

可愛いな…とボソッと零した私の声は聞こえているようで、下から睨むように顔を上げた彼の赤紫に私が映る。

だがすぐにいつものニコニコとした顔に戻り、八重歯を主張させた。

「知っとる?かっこええから可愛ええに変わる瞬間て…"好き"から、"愛しい"に変わった瞬間なんやて」

僕のこと意識しとるやろ、と笑っているのにどこか妖しさを含んだ彼の顔から目を逸らした。図星を刺されたような感覚になり、顔や耳が熱くなる。

そんなに私はわかりやすいだろうか…何か誤魔化せないだろうかと思考を巡らす。ちらっと見た八重歯を見て閃いた。

「わんちゃんとかにゃんこ、みたいだなって…」

「えぇ〜、僕ペットなん?……君のペット、なったろか?」

舐めたるで〜と揶揄うニュアンスで軽く言っているが、その瞳は本気のようにも見える。身体のみを求められているのはすでに知っている。高鳴る胸に虚しさを覚えた。

もうやめてくださいとフレンチトーストを口に運ぶ。甘さとチーズやハムの塩気のバランスが絶妙で、一口食べるごとにほっぺが落ちそうだった。

「夜、楽しみにしといてな」

さっきの続きしたる、と甘さと危険な香りを孕んだ声が、朝日が差し込む温かな部屋の中に響いた。
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