• テキストサイズ

偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第6章 仮契 〜演契〜


家に帰ってきてご飯を食べてからお風呂に入っていた。お湯に浸かってゆっくりしていると、全裸の副隊長が入ってきて焦る。咄嗟に顔を逸らしたが、見てしまった…。

「邪魔するで〜」

「なんでですか!?」

ええやんと言いながらシャワーを浴び始める。入浴剤が乳白色でよかった。上がることも出来ず、ただ俯いて私の胸から波を立てる水面を見つめていた。

どのくらいか俯いて、副隊長がシャワーを浴びる音を聞いていた。波を立てる水面を見つめていただけのはずなのに、視界が歪み始める。緊張で涙が出てきて、慌ててお湯に顔をつけた。

私のすぐ横にしゃがみ込む気配を感じたが、顔を上げることが出来なかった。少しお湯から顔を出して息を整える。私の息で、胸から立つ波を誤魔化せただろうか。

「朝霧〜?……澪ちゃ〜ん?…聞いとる?こっち向いて」

恐る恐る顔を上げて副隊長を見る。けど、直視なんて出来なかった。こんなかっこいい人から水が滴るところなんて直視出来ない!

「なんや、微妙に目ぇ合うてへん気ぃするんやけど」

ケラケラと笑う副隊長を尻目にぎゅっと目を瞑った。僕は別に見られてもええねんけどな…と呟きながら、私の目の前に腰を下ろしてお湯に浸かったようだ。
/ 409ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp