• テキストサイズ

偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第6章 仮契 〜演契〜


執務室で副隊長が帰る準備が終わるのを待っていると、廊下から足音や話し声が聞こえたので、慌てて副隊長に近寄り唇を奪った。

舌を絡ませながら副隊長を椅子に座らせて、両手で頬を挟む。手を移動させて髪に指を滑り込ませて必死にキスに沈んでいった。

されるがままになっている副隊長は少し口角が上がっていた。私の流れ込んだ唾液を、喉仏を上下させて飲み込んでいる。

執務室の入り口で止まっていた足音はバダバタと離れていった。

「……びっくりしたわ…キス、慣れてきた?」

ゆっくりと離れた唇で言葉を紡ぐ彼に首を振って答え、荒くなった息を整えるように肩に額を預けてボーッと体温を感じた。

ぽんぽんと優しく背中を叩く副隊長は微かに笑っている。

「出来たな。すごいやん」

副隊長の優しさに蕩けてしまいそう。これ以上優しくしないでと思うのに、どうしてこの優しさに甘えてしまうのだろう。

理由なんてとっくに知っていた。

"愛しているから"以外に何があると言うのか。
/ 409ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp