第6章 仮契 〜演契〜
執務室で副隊長が帰る準備が終わるのを待っていると、廊下から足音や話し声が聞こえたので、慌てて副隊長に近寄り唇を奪った。
舌を絡ませながら副隊長を椅子に座らせて、両手で頬を挟む。手を移動させて髪に指を滑り込ませて必死にキスに沈んでいった。
されるがままになっている副隊長は少し口角が上がっていた。私の流れ込んだ唾液を、喉仏を上下させて飲み込んでいる。
執務室の入り口で止まっていた足音はバダバタと離れていった。
「……びっくりしたわ…キス、慣れてきた?」
ゆっくりと離れた唇で言葉を紡ぐ彼に首を振って答え、荒くなった息を整えるように肩に額を預けてボーッと体温を感じた。
ぽんぽんと優しく背中を叩く副隊長は微かに笑っている。
「出来たな。すごいやん」
副隊長の優しさに蕩けてしまいそう。これ以上優しくしないでと思うのに、どうしてこの優しさに甘えてしまうのだろう。
理由なんてとっくに知っていた。
"愛しているから"以外に何があると言うのか。