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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第6章 仮契 〜演契〜


訓練が終わり副隊長の元へ駆け寄ると、お疲れさんと優しく頭を撫でられた。

「……もう大丈夫なんか?びしょびしょやったやろ」

耳元で低く甘く囁かれて全身に響いていく。頬を膨らませてキッと睨めば、可愛ええだけやと笑われた。

「宗四郎さん…早く、2人きりになりたいです…」

少し目を開いて私の本心を見透かすように見つめてから、おいでと手を引いていった。

いつの間にか肩に回った手が頭を引き寄せて髪にキスをする。視界の端には隊員が映っていた。

髪にキスをしていたかと思うと肩に回っている手が頬を摘んで、ぐぅ…っと上に引っ張った。なんなんですか、痛いのですが…。

「さっきはちゃんと出来とったんに、なんでそない固うなってるん?笑いや」

「すいまへん…痛いれす」

変な喋り方になってしまったじゃないか。頬が熱を持っていく。痛みだけの熱じゃないのはわかっていた。

指を離すと優しく撫でて引き寄せられる。摘んでいた場所に唇が触れた。もうすでに痛みの熱ではない。顔が熱い…副隊長に触れる手は微かに震えていた。

頬に触れる手を掴むと指を絡め取られて、離してもらえない。腕を上げたまま繋がった状態で庁舎へと向かう。

廊下を歩いていれば、中之島小隊長が相変わらず仲良いですねと声をかけてくる。

「せやろ〜?すぐ赤なって可愛ええねん」

なぁ?と覗き込んでくるので近過ぎる顔にまた私の温度が上がっていく。

「……そ、宗四郎さんだって…昨日、赤くなってました…」

「ほう?よう言うやないか。そういうんは覚えてなくてええねん」

また頬を引っ張られて、先程よりも強い力に涙目になりながら痛いですと訴える。そのまま中之島小隊長と別れて執務室へと向かっていく。頬を摘んだ指を離してくれなかった。

後ろに視線を送った副隊長は摘んだ指を離して顎を持ち、上を向かせると…鼻を噛んだ。えっと…?今、キスする流れじゃありませんでした?ガジガジと甘噛みをされて、八重歯が刺さる。
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