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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第6章 仮契 〜演契〜


「澪ちゃん、顔上げて?僕、まだ足りひん」

甘く掠れた声が鼓膜を震わせて、全身まで震えていく。

ゆっくり顔を上げればまた重なる唇。少し唇が離れる度に好きや…と囁かれた。全身が熱くなっていく。もっと欲しい…副隊長が欲しい。

「あの2人、あんな感じなんだ…」「えろいな…」
完全に見られていることを忘れてしまっていて、ヒソヒソと話す声が聞こえ、ドクンと心臓が跳ねる。

隊服の下に入り込んだ手がお腹を撫でる。そのまま脇腹まで移動して、素直にその手に反応した。

水音をたてる舌が離れると、お互いの熱い吐息が混ざり合った。

「ん、はぁ…宗四郎さん……もっと…」

「これ以上したら澪ちゃん、耐えられへんのちゃう?」

心が勝手に求めてしまう。この人に触れられていたい。周りの時が止まってしまえばいいのに。

太腿を硬く閉じながらピクピクと揺れる腰を撫でられると甘い声が漏れて、塞ぐようにまた唇が重なった。まるで、聞かせたくないと言うようにキスをしながら身体に刺激を与えていく。

それを見た隊員が慌てて離れていく足音がやけに響いた。
執務室には椅子が軋む音と深いキスがもたらす水音と2人の息遣いだけが響いて、五感を支配していく。

見られていたこともどうでもよくなって、このままこの熱に流されてしまいたい。

副隊長も隊員がいなくなったことに気付いているはずなのに、甘くて情熱的な行為は終わりが見えなくなっていった。
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