第6章 仮契 〜演契〜
「宗四郎さん…好き、好きっ…大好き…!もっと触れて…好きだから、もっと…好きです…宗四郎さん」
好き好き言い過ぎておかしくなりそう。届かないと知りながら、『好き』に全てを乗せて、彼の頬に手を添えながら見つめる。
副隊長は目を見開いて、その赤紫の瞳で見つめ返してくる。その瞳に私の心臓は締め付けれた。
「ほんまに僕のこと好きみたいで、ええな。もっと言うて」
え、それはどっちですか…演技?それとも…本心?そんなわけはないかと沈みながら、頭を引き寄せて額を合わせる。
愛してます…気持ちを滲ませながら呟いた。
「うん、僕も…」
密着した2人の温度が上がっていく。演技のはずなのに…お互いこのまま雰囲気に呑まれてしまいそう。
「好き…宗四郎さん、好きなんです……抗えない程、あなたを求めてしまう…」
震えていく声が本物だと叫んでいる。好きだと言葉にする度に抑えきれなくなって、想いが溢れていく。
頬を擦り寄せて、泣いているのかと思う程、声を震わせながら本物の愛の言葉を紡ぐ。届いて欲しいのに届かない。届いて欲しくない。それなのにあなたを求めてしまう。
副隊長が黙り込んでしまって、どうしていいかわからずに、ただ『好き』と呟き続けた。
胸が締め付けれる程痛いのに、心音は大きくなり早くなる。苦しいのに想いを吐き出せる喜びから、止まらなくなってしまう。
黙っていた副隊長は私の頬に触れて離れさせる。赤紫に射抜かれて、何も喋らない彼に不安になる。その瞳は動揺に揺れている気がした。
「あ、泣いてへん。よかった…ほんまに泣いてるんかと思た」
「副隊長…好き」
しまった、副隊長って言ってしまった。
「ふっ、宗四郎さんも好きやよ」
至近距離で笑った副隊長に心臓が跳ねた。