第6章 仮契 〜演契〜
昼休憩になり食事を終わらせてから、副隊長の執務室に入っていく。今はまだ誰もいない。
「澪ちゃん、練習しよか。下手過ぎんねん」
すみませんと呟くと、ちゃんと言うてと『好き』を求めてくる。恥ずかしい…周りに隊員もいないのに好きだと言うなんて…本当に言ってるみたい。
「す、スキデス…」
2人きりという事実に余計ぎこちなくなってしまう。
「もっと、僕を愛しいて顔で見つめてや。台詞もカタコト過ぎる。なんで余計悪うなっとる?」
怒られた…だって、『好き』なんて恥ずかし過ぎる…私の気持ちそのまんまなんだもん。
椅子に座っている副隊長に引き寄せられて、膝の上に座らせられる。頬を撫でながら耳元でちゃんと言うてと囁いてきた。
そして私はあることに気付いた。気持ちが本物なら無理に演技をしなくていいのでは、と。