第5章 仮契 〜契初〜
愛しい人の温度に安心していると肩に掛かった膝掛けを取られ、慌てて胸を隠す。そんな私を見た彼は笑いながら電気を消した。
「そろそろ寝ぇへんと、明日の訓練でまた怒鳴るハメなるわ」
「わかってます。でも…副隊長怖い…」
「はは…すまんて。そない怖かった?」
寝室に向かいながら優しく頭を撫でられる。心地良さにもう少しだけ寄り添いたくなった。その手を取って自身の肩に回させる。甘えているだけだから…。
怖かった…と拗ねるように呟いて、肩に頭を預けた。
ベッドに横になると、頭の下に逞しい腕があった。
「硬うて寝心地悪いやろか…」
「ねぇ宗四郎さん…偽装結婚の相手を変えたりしますか?」
ふるふる首を振って答え、眉を下げて見つめた。するわけないやんと抱き締めた彼の腕が安心をもたらしてくれる。
違うの…これは恋心とかそういうのじゃなくて、純粋に副隊長を守りたいというちゃんとしたもので…あなたの信頼を得られていると優越感に浸りたいだけ。それだけだから…。
「副隊長は私のことを一番信頼してますもんね」
「副隊長言うたり、宗四郎さん言うたり……一番信頼しとるんは、亜白隊長やわ」
だって、信頼してるのは副隊長で、宗四郎さんじゃないでしょう?私は宗四郎さんの信頼も欲しいな…。
「そこは嘘でも、"そやな"って言うところですよ」
そやなと笑いながら鼻を髪に擦り付けてくる。でも私は正直な宗四郎さんが好きですよ。
少し…亜白隊長に嫉妬してしまったのは内緒。
おやすみなさいと一番安心出来る場所で眠った。