• テキストサイズ

偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第5章 仮契 〜契初〜


ご馳走様でしたと呟くと、美味かったか?と聞かれたので副隊長の方を向いた。片膝を立てて私の方を向き、自身の膝で頬杖をついて私を見つめている。

「可愛ええな…」

気付けば伸びてきた腕に閉じ込められ、頭がぽんと胸に当たった。私が甘えていると、こんな風に甘やかしてくれるんだ…甘えている時だけ…。

「……美味しかったです」

「じゃあ…僕ももらってええ?」

何を…と見上げると言い終わる前に口を塞がれた。もらってもええ?と言う割に、触れた唇はすぐに離れていく。

そこに愛情はないのだと一線を引かれているのはわかっているが、高鳴る胸を無視することは出来なかった。

優しく微笑む彼の表情に胸が締め付けられる。ときめきなのか辛さなのか、わからなかった。

「ぎょうさん甘やかしたる。奥さんやしな」

まだ子供と思っているのか、偽装結婚から来る義務感なのか、それとも…無意識なのか。
うん、この人の場合は無意識だ。

頭をまた引き寄せながらぽんぽんとされる。あーあ、好きだなぁ…早くなる鼓動を受け入れながら目を瞑った。
/ 409ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp