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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第5章 仮契 〜契初〜


待っとったん?と洗面所から出てきた副隊長に頷く。

「よし、今日は特別や!プリン食ってから寝よか?」

行こかと胸を隠していた手を取られ、慌てて片手で隠す。もう見たでと笑う副隊長に顔を熱くさせた。

プリンを食べれることは嬉しいはずなのに、ときめきだけが胸を支配する。
寝る前にプリンを食べられるという最高な展開なのに、私は副隊長の存在だけを意識していた。

リビングに来て、冷蔵庫からプリンを出してきた副隊長に差し出される。受け取りながらも指が触れる嬉しさに胸がときめいた。

ソファに座ってなるべく胸が見えないようにプリンを食べ始めると、肩に膝掛けが掛けられる。

「なんも気にせんと食いや…プリン、そんなに好きか?」

「はい…好きです!」

副隊長が好きです。誰よりも、何よりも、あなたが好きです。そんな想いを乗せた言葉すらも、そうかと笑う彼によって、淡く消えていく。

食べますか?と聞くと緩く首を振った。

「君を食いたい」

はにかむように笑った彼を見て、全身が震えた。本当は副隊長は、こういうのに慣れていないんじゃなかろうか。明るいところでよく見ると、ほんのり頬が桃色に染まっていた。

この顔は私しか知らないんじゃなかろうか…そう思っていたい。

副隊長のその顔に呼応して私の顔にも熱が集まっていく。ほら、また…好きが募っていく。

「……君の前やと、調子狂うねん。あんま見んで…」

自覚してたのか、そんな顔をしていたと…。すでにすごいことをしているのに、顔を背けた彼が愛しくて堪らなかった。

いいですよ、ずっと調子が狂ってたらいいんです。
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