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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第5章 仮契 〜契初〜


「澪ちゃん…ほんまに可愛ええ。僕にどうして欲しい?何でもするで?」

副隊長の瞳は確かに熱が宿っている。甘えたい…でも、愛されないまま一線を超えるのは嫌だ。喉まで出かかった言葉を飲み込み、ただジッとその瞳を見つめた。

私の一方通行なこの気持ちも胸の高鳴りも、副隊長には届かずに泡になって消えてしまう。どうしたらあなたは、私を好きになってくれますか?

「…宗四郎さんは…私のことをどうしたいですか?」

やっと絞り出した言葉は副隊長に飲み込まれた。また激しく絡まる熱は、私の気持ちだけを昂らせていく。

心臓は締め付けられるように痛いのに、膨らみに触れたのその手はどこまでも優しくて温かい…私たちの関係はなんなのだろう。

「……こうしたい。君の身体、全部奪いたい」

名残惜しく離れた唇が紡ぐ、熱くて残酷な言葉。欲しいのはあくまで身体で、私の気持ちなどいらないと跳ね返されているようだった。

「…私がなんで、副隊長とこんなことをしてるか、わかります?」

寂しいから…?と首を傾げる副隊長を睨むように見つめた。本当はわかっているのでないか、そんな風に思ってしまう。でも私が言葉にしないことで、今の関係は保たれていて、偽装結婚も成立している。

「信じているからです」

「訳わからへん…僕のこと、副隊長としか見てへんのやったら、嫌やろ?」

だったら、副隊長は私のこと、どんな風に見てるんですか?

もういい…と背中に手を回して副隊長の熱と重みを感じる。この重さくらい、私のことを想ってくれていたらいいのに。

私の気持ちを考えようともしないくせに、あなたは私を好きにさせる天才。あなたの全てが私を惑わす。だから、届くはずもないこの心を一方的に擦り寄らせるの。

そのままおやすみなさいと呟き、目を瞑った。

「え……今日もあかんの?ええ雰囲気やと思ったんに…」

愛しい人に身体だけ求められる辛さがわかりますか?あなたの優しさも甘さも、全て偽りならよかったのに。

横に移った副隊長に引っ張られて私は横を向いた。このままどこまでも、離さずにいたい。
だけど…この気持ちは私の奥底に隠すの。弱っているから甘えてるのだと、思っていて…。
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