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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第5章 仮契 〜契初〜


抱き締められ、お尻に回った手にそのまま持ち上げられる。首に手を回してギュッと抱きつけば、私の気持ちなど全て伝わってるかのように、耳元で囁かれる。

「僕を求めてええで…」

耳を擽る甘く掠れた声に背筋を震わせ、言葉にする代わりに抱き締める腕の力を強めた。早る鼓動さえも追い越すように私たちの距離は縮まっていく。

わかっている、これは今日だけ。私を慰める為だけの、彼の優しさと甘さ。好きなんて言っちゃいけないんだ。

副隊長の寝室のベッドの上で座ったまま抱き合う。彼の胡座の上に座り、離れたくないと腕に力を込める。胸に副隊長の顔を埋め、かかる熱い息に身を屈めた。

私のこの鼓動を聞いて…あなたがこうさせてるの。

私を抱き締める手は優しく背中を撫で、ホックに指をかけると、胸から顔を上げて確かめるように見上げてくる。

「脱がせてええ?後は君の好きにしたらええ…」

僅かな光に反射して紫に光る黒髪に口付けを落とすと、パチンッと弾けて締め付けがなくなった。着ていたTシャツを脱がせられて、ブラまで腕から抜けていった。

また彼の背中に手を回してTシャツを指でたくし上げると、腕を上げて素直に脱がせられている。

ゆっくり後ろに倒れていけば、副隊長も私を支えながら倒れた。露わになった赤紫を見つめて目を閉じた。

重なった唇から熱い舌が伸びてきて、私のそれに優しく絡む。今、私を誰だと思って唇を重ねていますか?

ゆっくり優しく絡んでいた舌が離れていく。嫌だと求める舌は彼の舌を追って伸びていった。それでも終わりは来るもので、糸を引きながら舌先が離れた。
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