第2章 再会
「……っ、すみません!」
「そない慌てんでも大丈夫や」
我に返ったようにバッと離れたその子は、グイっと袖で涙を拭い、ありがとうございますと屈託のない笑顔を僕に見せてくれた。その笑顔に息を呑む。震えて泣いていた子が、僕の知る温かい声に戻った瞬間だった。
「…ええ顔やね」
僕も笑顔を見せた。
なんで泣いてたんかはわからん。けど…その顔はあまりにも美しすぎて、思わず見開いた目に鮮明に跡を残す。張り詰めて冷たかった空気すらも一瞬で解き放たれて、温かさに包み込まれたような錯覚になる。
春の温度を感じて綻んだ花みたいに、僕の腕の中で温まってくれたのだろうか。
ただ、僕の心臓を鷲掴みにしたのは許さへん。
「……付き合うたろか?」
僕がこういう場面に慣れていないのを隠す為に、その笑顔に衝撃を受けたのを隠す為に、普段通りの僕みたく軽い言葉を吐く自分に逃げた。