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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第5章 仮契 〜契初〜


昼食を食べ終わり、きつい午後の訓練を終わらせて帰る準備をしていると、外そうとしていた通信機から愛しい声が聞こえてきた。

「澪ちゃん?今日帰るん、21時くらいなりそうやわ」

「ご飯は…どうしますか?」

負担じゃなければ作っておいて欲しいと言われた為、返事をして通信を切ろうとした。

「帰る前に執務室来てくれへん?ちょっとでも会いたいんや」

近くに隊員がいるんだろうな、と思いながらも早くなっていく鼓動。私も会いたいです…私だけが本心の寂しい現状。"アヤ"が誰かも突き止める資格がない私。

ワクワクとズキズキを抱えたまま執務室へと向かった。

執務室まで来れば手招きをされて、座っている副隊長まで近寄る。少し距離を取って止まると手を引かれて、充電やと腰に手を回してお腹に顔を埋めた。

じんわりとお腹を中心に熱くなっていく身体を無視して、さらさらの黒髪に指を通した。引っ掛かることなく抜けた指は、固い肩に辿り着く。

「出来るだけ早う終わらせるから、持っとってな?」

「はい……宗四郎さん…好き、です」

小さくなっていく声が、偽物ではないと示しているかのよう。

離れた副隊長を見て頑張ってくださいと声をかけ、作業をしている小隊長たちに声をかけてから執務室を出た。

今はこの気持ちを持っていく。置いて行くことなんて出来ないから。
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