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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第5章 仮契 〜契初〜


行こかと私の手を取った彼に引かれ、玄関を出る。偽りの私たちの始まりだ。

指を絡めて名前で呼び合い、基地へ向かう。この人を守る為に泣いている心を隠すのだ。

歩いていれば後ろに気配を感じる。通勤の人かとも思ったが、明らかに真っ直ぐ視線を感じる。いろんな人がちらちらと見てくるが、それとは違う視線。

「澪ちゃん……今日も可愛ええね、愛しとるよ」

わかっている、これは演技。みんなを騙すもの。副隊長もつけられていることは気付いている。一瞬目配せをされたから。

演技だとはわかっているが、胸の高鳴りが鳴り止まない。顔も熱くなっていく。よくそんなことをすらすらと言えるな、とも感心さえしてしまう。

私も腕に密着して距離を縮めた。

「宗四郎さん…あ、アイシテマス…」

下手やなと吹き出す副隊長を見て、胸が締め付けられた。棒読みだが、私は本心なのだ。伝わることがないとわかっていながら、もう一度、愛してますと呟いた。

未だに笑っている彼は私の歩幅に合わせながら、基地への道を急いだ。時間がギリギリなのだ。私が遅く起きてしまったから。初めて飲んだお酒が効いていたようだ。

「そういうとこも可愛ええよ」

「もう!揶揄わないでください!」

揶揄ってへんと笑う副隊長はどう見ても揶揄っていた。
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