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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第5章 仮契 〜契初〜


シャワーを浴びて戻ってきた副隊長は濡れた黒髪を揺らしながら冷蔵庫へと向かう。

「朝霧〜、今日は飲まへん?入隊と引っ越し祝いや!」

「え!いいんですか!?私まだお酒飲んだことなくて…」

大人の階段登ろか、と言いながら、冷蔵庫からおつまみや缶ビールを出してくる。初めてで缶ビール…飲めるかな?少し不安になりながらも、初めてのお酒を副隊長と飲める喜びに胸を弾ませる。

運ばれてきた缶ビールをプシュッ…と開けて、副隊長よりも少し下の位置に缶をずらして、カンッと軽くぶつかる。

「かんぱ〜い!です」

「です、はいらんわ。楽にしぃや、酒の席や」

軽く笑いながら頷いて、ビールを喉に流し込んだ。炭酸のジガジガと弾ける刺激と苦味が広がる。思わず美味しいと呟くと、苦めの好きなん?と笑う。確かに苦味が強いなと思ったけど、初めて飲んだからこういうものだと思った。けど、これは苦めのビールらしい。

おつまみを食べていると甘い物が食べたくなり、キッチンに行き冷蔵庫の中を見る。プリンがあったので、それを手に取ってソファへと戻った。

「お前…ほんまにプリン食うんか?ビールのアテに…?」

甘い物が食べたくなって、冷蔵庫にプリンがあったらそりゃあ食べるだろう。大好物なんだから。

顔を引き攣らせた副隊長を他所にプリンを食べて、ビールを飲む。苦味とプリンの甘さが絶妙に合って美味しい。

「嘘やろ…僕は絶対無理や…」

ニコニコしながら食べる私を見て、八重歯を見せながら、うえぇ…と口元を引き攣らせていた。恐らく、揶揄っている。

「でも…可愛ええな。そないニコニコしながら食って」

ドキンッと跳ねた心臓は無視した。きっと、お酒を飲んだせい。
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