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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第4章 指令


バタバタとした朝の準備が終わり、一緒に外に出る。すぐに繋がれた手は熱を増し、嬉しさや緊張で震えている。そんな私とは裏腹に眉一つ動かさず涼しい顔を崩さない副隊長にまた寂しさが募っていく。

こんなにも動揺している私と冷静な副隊長との気持ちの差が思い知らされる。

どんなに想っていても無駄だと、意味がないことなんだと言い聞かせても、高鳴る鼓動は止められない。
自分の感情をコントロールするなんて出来なかった。

「はよ慣れて。夫婦で手ぇ繋ぐだけで緊張しとるんなんて、おかしいやろ」

指を絡まれて繋がれた震える手を、親指で優しく撫でられた。指先の熱とさり気ない優しさに、震えは治まらない。

特に感情を出していない表情をしながら前を向いている。その視線は私を捉えていなかった。彼の目には私の気持ちなど見えていないのだろう。それでよかった。よかったはずなのに…。

この関係を続ける以上、私の気持ちはいらないもの。今日はみんなの前でちゃんと笑っていなきゃ…副隊長の前では平静を装って…掻き乱される心を隠して、今日も私は前を向いた。

手の温もりにざわつく心、この距離の近さに高鳴る胸と本物の距離じゃない寂しさ、一番伝わって欲しい人には伝えられない想いを抱えたまま、泣く心を隠して進み続ける。

夜程ではないが、朝の足早に過ぎていく人たちの中に、ちらちらと見てくる人たちがいる。私は今日もちゃんと演技を出来ているようだ。

私の想いもこの人波に流されてしまえばいいのに…。
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