第25章 番外編 新婚の僕らが零す涙の向こうは
あの葬儀の日。僕は君の姿に目を奪われていた。
必死に涙を堪える幼い澪は、どんな大人よりも……どんな防衛隊員よりも――凛々しく、強く見えた。
それでいて、とても脆い。だから僕は、涙を流す理由をあげたのだろう。軽く零した言葉だった。だがそれは、君の軸になった。僕の言葉が……僕が、君の真ん中にずっといた。
「なんでこないにも、惹かれるんやろな……」
僅かに反応する澪をぎゅっと抱き締める。葬儀の幼い君に惹かれて、あの日の君の言葉に、僕は――恋をした。
「ずっと……ずっと前から、澪が好きや。愛しくて愛しくて、堪らへん。……"おおきに"」
ゆっくりと頬を伝った雫は、澪の髪に流れた。
どうしようもない僕を許してくれて、僕を愛してくれて――ほんまに"おおきに"。
「宗四郎?どうしたの?」
「ん〜……澪がおってくれて、ほんまに嬉しい。"おおきに"」
腕の中で息を呑む音が聞こえ、震え出した。澪も泣いてしまったらしい。「見せて」と頬を包み込んで、顔を上げさせる。
額を合わせて見つめ合った。
僕らの涙は、あの悲しい過去とリンクするもの。
君が独りで零した涙は、これからは僕が拭う。
「澪。僕の前で、安心して泣いてや」
「ん。……ふふ。宗四郎……好きだよ」
「ふっ。僕も好きや」
涙を流しながら、2人で笑い合う。
あの日、トレーニングルームで零した君の冷たい涙は、僕の腕の中で温かい涙に変わった。
僕らが零す涙の向こうは――笑い声が響いている。
_______________....end.