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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第23章 新命


「なぁ澪……防衛隊員、辞めてくれへん?」

自身の膝に座らせた私の肩に顎を置き、耳元で囁きながら頬を擦り寄せてくる。どうしてそんなことを言うのかわからなかった。私がなんの為に隊員でいるのかわかっているはずなのに。

「もう、ええやん。君はよう頑張ったで。ただの…ママになってや。ほんで――ずっと、僕の奥さんでおって」

答えない私とそれ以上口を開かない宗四郎のお陰で、部屋は沈黙に包まれていた。流していたテレビの音だけが響く。

そして、沈黙を破ったのは…宗四郎だった。握った手を指で撫で、ひと笑い。

「ふっ…僕が言うても辞めへんのはわかっとる。この子が大人になった時、防衛隊が必要とされへんよう、頑張ろな」

「……ん」

手を撫でていた指がお腹に移動し、撫でる。短く返事をして、こてんっと頭を宗四郎の頬に預けた。

お父さんもお母さんも、そんなことを思いながら…私が大人になった時、防衛隊が必要とされなくなった未来を願いながら、戦ってたのかな。

私が…私たちが二人の、先輩たちの願いを叶えていく。殉職した先輩たちは"負けてない"。だって――私たちが生きているから。守り切ったのだから。

「宗四郎、"おおきに"」

零れた涙は頬を伝い、優しい指が僅かな飛沫を上げた。弾けた雫は温かさを残して消えていく。

もう誰も、大切な人の冷たい遺影を抱き締めて、涙を流しませんように…。
大切な誰かの腕の中で、温かい涙を流せますように…。

「澪、愛してんで」
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