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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第23章 新命


「澪、立てるか?忘れもんない?」

退院の日、宗四郎はベッドに座る私の周りで、忙しなく動き回っていた。リハビリも終わったし、普通に立てるのだけど…そんな宗四郎を見て、思わず、「ふふっ」と笑みが零れた。

「なんや?……可愛ええからちゅーしたる」

「ん……なんで?」

意味がわからずに私が固まってるいる間に触れるだけのキスをして、また準備に取りかかる。「自分で出来る」と言っても、退院の準備はさせてもらえなかった。

「可愛ええからや」とまとめた荷物を持った宗四郎は、行こかともう一度キスをしながら私の手を取った。そうか――欲求不満なのかもしれない。

防衛隊の医療での治療で2週間での退院になったが、宗四郎はこれからも我慢することになる。訓練に復帰出来るのは、これから2週間後。出動等、完全に復帰出来るまでに、さらに1ヶ月。

だが、お腹の子のことも考え、ほぼ事務作業になり、出動時も後方支援となる。そして――宗四郎がこの子が生まれるまで我慢出来るのか…。

「したいの?」

病室を出る前に問いかけてみた。

「ん〜、何が?」

「え…えっち……」

振り向いた宗四郎がジッと見つめてきた。な、何か言って…。

「そりゃあ、な。……せやけど、生まれるまで無理やろ」

出来なくはないけど、何も言わないでおいた。出来るだけリスクは避けたいし、宗四郎もそれを望んでいない。

「行こか」と笑って手を引く宗四郎についていった。
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