第23章 新命
家についてソファに座り、荷物を片付ける宗四郎に「それは後で」と言って袖を引っ張った。
「なに?どしたん?」
袖を掴んでいた手を指を絡めて取られ、ぎゅっと握る。
「医療棟で出来なかったこと、したいな?」
「医療棟で出来なかったこと?なんかあったっけ?風呂浸かりたいん?……あ、なんかええもん食いたい?」
「寿司とか…」と呟きながらスマホを取り出す。そんな宗四郎から、スッ…とスマホを取ってテーブルに置き、ジッと見つめる。
「っ!すまん、寿司あかんな」
慌てる宗四郎を見て握った手を引くと、自由な手をソファの背凭れにつけ、自身の体重を支えている。
もっとこっちに来て…胸元の隊服を引っ張り、その胸に顔を埋めた。宗四郎の匂いがする。宗四郎の鼓動が聞こえる。すごく落ち着いた。
「なんや、イチャイチャしたいん?医療棟でもしてへんかった?」
確かにキスとかもしていたけど、なんか違うんだもん。家で二人きりの時に触れ合いたい。もちろん、どんな時でも触れ合いたいけど、医療棟には人の目がある。
どうしても、演技の時のことを思い出して、"これも演技なんだ"って、意味もなく思ってしまうのが嫌だった。ここで二人きりなら、演技なんてものは考えなくて済む。
「宗四郎、好きだよ――」
ゆっくり顔を近付けていって、唇が触れる。唇を軽く舐め、薄く開いた唇に舌を差し込んだ。舌が絡んで、次第に熱い吐息が漏れていく。
胸に触れていた指を滑らせて、ベルトに触れた。