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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第23章 新命


その後、宗四郎は医療班の隊員を呼び、私の容態を確認する。脇腹の傷は、跡が残るそうだ。気にしない。それは――私が怪獣と戦って、討伐した証拠だから。とは思うけど…宗四郎が嫌だったら、申し訳ないな。

「怪獣ごときが、僕のもんに傷付けんなっちゅーねん、ほんま……せっかく、綺麗な身体やのに…守れんかった」

跡が残るというよりも、私の身体が傷付いたことが嫌だったようだ。「傷跡、嫌じゃないの?」と細い目を見つめて聞く。

「嫌とかあらへん。君が必死で戦った証拠やろ?……ただーー澪が痛い思いしたんは、嫌やな」

宗四郎もそんな風に思ってくれてるんだ――やっぱり好きだな。すごく。言葉では表せないくらいに、好き。

「うん…」と短く返して、目を細めて宗四郎を見つめる。触れて欲しいと少し指先を動かすだけで伝わる。そっと手を少しだけ大きな手で包み込んでくれた。

温かい…宗四郎はいつも温かい。屈んで指先に口付けを落とすと、柔らかく微笑んでいた。なにこれ…すごく幸せでふわふわするのに、心臓は痛い程鳴り響く。

「好き……宗四郎のこと…泣きそうなくらい、胸が締め付けられて苦しいくらい、好き」

目を見開き、息を呑む宗四郎。なんでそんな、驚いたような反応をするの…知ってるでしょ、このくらい。

「言葉じゃ足りない。この子がその証拠になるのかな…?」

お腹に目をやり、また宗四郎に戻す。未だに見開かれたままの瞳から、一筋、雫が零れた。

「あ、あかんわ…当然、そんなん知っとるのに…言葉にされると泣いてまうくらい嬉しいわ」

「僕もそんなんなるくらい好き」と私の手に頬を擦り寄せた。宗四郎、甘えてる。もっと甘やかしたいのに、私の身体はそんなことをさせてはくれなかった。

宗四郎の気持ちが私に追いついたことが嬉しくて、ただただニコニコしていた。
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