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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第23章 新命


目を開けても頭がずっとふわふわしていて、身体中がだるい。傷口や骨折した部分から痛みも感じる。それでも、耳に届く大好きな声が柔らかくて、優しくて…自然と心が楽になる。

霞む視界の中、愛しい人が微笑んでいるのがわかった。髪を撫でて額に触れる、温かくて柔らかい感触。

「ん…好き……」

「はは、目ぇ覚めて一言目が"好き"か…ええな。僕も好きやで」

目尻を撫でるように親指を滑らせ、左手でお腹を優しく撫でられる。

「ここ――守っとったようやな。これからは、僕にも守らせてな」

あ、私が一番最初に伝えたかったのに……。

「ん…守ろ……宗四郎の、赤ちゃん…」

まだ上手く言葉を発せないけど、伝わるくらいには喋れている。宗四郎もちゃんと聞き取ってくれる。宗四郎の手、温度、声…雰囲気全てが、私を優しく包み込んでくれていた。

あれからどのくらい経ったのだろうか。宗四郎も顔に絆創膏を貼り、小さな傷はそのまま目に見えていた。いっぱい、頑張ったんだね。

少し下げた隊服のファスナーから覗く胸は、包帯で隠されていた。他は怪我してないだろうか、骨折はしてないだろうか…身包みを全て剥いで確かめたい。それでも、私の身体は自由ではなかった。

宗四郎に触れようと手を伸ばそうとしてみても、痛みで少しも動かない。触れたい…だから、もっと私に触れて。

「治ったら――指輪買いに行こな。君の好きなん選んで」

指に触れた宗四郎の手が温かかった。
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