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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第22章 決結


澪を見つめていると、呼吸で僅かに動いていた胸が、止まった。すぐに胸に耳を当てる。鼓動が、聞こえない。

あかんっ…!澪、何しとるん?ちゃんと息しぃや。僕、君なしじゃ生きられへん言うたやろ!?

すぐに澪の身体を整え、顎を上げる。死なせへん。胸を押して時折、息を吹き込む。胸骨を圧迫する度に手に伝わる軋み。骨、折れとるな。痛いな、ごめんな。やけど、今は止められへん。

「澪っ、澪…!まるで――"僕を待ってた"みたいに逝くなや!!」

救護班、はよ来いや!澪が死んでまう…!僕の大切なもんが失くなる!

どのくらいか続けていると、四ノ宮が「変わります!」と駆け寄ってくる。それでも僕はリズムを刻むのをやめなかった。

どのくらい経ったかわからない。僕の身体も限界を超えていた。元々、限界やったんや。もう腕が動かん…そう思った時、四ノ宮が声を上げた。

「副隊長!!澪、息してます!脈もちゃんとあります!」

その声に動きを止め、リズムを刻んでいた手をゆっくり頬へと伸ばす。血が固まった唇を撫でると、確かに指に呼吸を感じた。ほんの少し、澪の顔が柔らかく微笑んだ気がした。

その後、救護班が到着し、僕は治療を受ける澪と一緒に、立川基地へと戻った。
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