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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第22章 決結


記念公園の敷地に入ると、足は地についた。荒れている方へと歩を進めた。四ノ宮もついてくる。澪とは同期やしな、心配なんやろ。

隊員たちが倒れている。「もうすぐ救護班が来る」と声をかけて回り、あの子の姿を探す。至るところにこびりついている人間の血は、匂いがわからなかった。僕も相当な血を流している。

大きな黒い塊の近くで、花畑の中に横たわる人物を見つける。

「澪……澪!」

すぐに駆け寄り、頬を撫でて首に指を当てる。大丈夫や、生きとる。けど――脈が弱い。それもそのはず、澪の怪我は相当酷い。よう生きとってくれた。

意識がないにも関わらず、ずっと脇腹を押さえている手をそっと外してみる。血は止まっている。だが、澪がいる地面は、大きな血溜まりが出来ていた。

それはそうと…なんで腹を守るように手を乗せてるんや?

「澪、もう大丈夫やで。よう頑張ったな」

髪を撫でながら、微かに開いた唇に口付けを落とす。少し冷たくなった唇を温めるように、僕の唇で包み込んだ。血の味がする。澪の唇には、固まった血がついていた。

救護班が来るまで迂闊には動かせない。頬や髪だけに触れ、澪の存在を確かめる。眠っているように目を閉じているその顔を見つめていると、ゆっくり開いていった。長い睫毛が微かに揺れる。

「お、つかれさま…そう、しろ……」

弱々しく微笑んだ彼女を見て、約束を守ってくれたことに感謝した。掠れた声すらも愛おしい。

「ん、澪もお疲れさん。可愛ええ顔見せてくれてありがとう。可愛ええ声聞かせてくれてありがとう」

髪を撫でていると、僕の言葉を聞いた澪はもう一度目を閉じて、それから目は覚まさなかった。
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