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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第21章 本心


「ガハハハハハハハハハ!!」

10号の笑い声で一気に現実に引き戻される。

「どうだ、防ぎ切ったぞ!!褒めろ!!」

意識が飛んでいた。澪は、ここにはいない。あの子も別の場所で戦っとる。
右腕もちゃんとそこにあった。

10号が尻尾を犠牲にして僕を守ったようだ。

すぐに体勢を整える。
刀は手放したくない。澪と一緒に生きる為に死にたくない。だが――僕はもう……。

「さぁ、次はどうする、ホシナ!!」

「次?」

次ってなんや…もう今の僕らに、あいつに通用する技はない。もうどうすることも……。

「やめたくねぇんだろ?俺は拳、お前は刀。死ぬその瞬間まで――好きなことして、楽しもうぜ」

10号の言葉に、全身に電流が流れたような気がした。楽しい…?

刀を振り下ろす12号の攻撃を鞘で防ぎ、吹き飛ばされる。

僕は何故、兄貴に負けても負けても、振ることをやめなかった。
僕は何故、おとんや上司に止められても止められても、戦うことをやめなかった。

「兄貴に勝つ為」ガキの頃はそのことを考えていた。
「それが、唯一の僕の取り柄やから」隊員になってもそうやった。
「副隊長としての務めを果たす為」誰よりも尊敬しとるあの人を、支える為に副隊長になってもそうやった。

全て、10号に否定される。

僕は、僕は――勝てへんのに、何度も何度も兄貴に向かっていった。笑顔で――そや…そうや――…

「刀を振るのが、楽しいから」

僕の中の10号が力を増していく。

「そうだ」

12号の斬撃を鞘で防ぐ。10号も尻尾を使って防いだ。だが、衝撃で飛ばされる。

「やめたくねぇんだろ!?手放したくねぇんだろ!?そりゃお前――楽しいからだ!!」

10号が僕の中で、あの時のようにブクブクと膨れ上がり、巨大化した。あぁ…力が湧いてくる。
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